エドワード・エルリック、アルフォンス・エルリックに、国で硬く禁止されている人体錬成を試みた国家反逆罪により、極刑を求刑する。彼等は病死した母親を行き返そうと‥
彼等の母は家を出た父に代わり家を支え、また母としても兄弟の面倒を実に良く見ていました。幼い兄弟にとって母は世界の全てであり、その母への愛情は、失った悲しみは埋められないほど深かった事は周知の事実‥
家庭事情には同情を禁じえませんが、天才錬金術師として名高い‥
彼の業績は素晴らしい!その事を忘れてはなりません。禁忌を犯したのは、まだ幼いと言ってもよい年頃の事なのです!しかもその当時他に身寄りのなかったエドワード・エルリックの肩には弟を守らなければいけない重責と、国家錬金術師ではない、即ち不確かな収入源の中で生活、いえ、人の基本、明日の、次の食事すら得られるか分らない中で行われた‥
罪は罪、二人に極刑を‥
待ってくれ!アルはっ、アルは止めたんだ!俺が無理やり‥」
告は発言を控えて下さい。被告の発言記録は削除してください。
裁判長!
弁護人に発言を認めます。
今お聞きになったとおり
発言は削除されました。
では、検事側の発言を思い出して下さい。エドワード・エルリックは稀に見る天才錬金術師なのです。真っ当な精神状態でしたら、思い止まっていたはずです。その事からも、当時の彼には年齢的にも精神的にも責任を負える状態ではありませんでした。弁護側は当時心神喪失状態だったエドワード・エルリックの無罪を主張するものであります!
傍聴席から拍手が起こり、弁護士はエドに頷いた。だが、エドは険しい顔で口を開こうとし、アルに慌てて止められる。
確かに。エドワード・エルリックの業績を顧みれば罪を問うには惜しすぎる。しかし‥
検事に見つめられ、次の言葉を待つエドの体が小刻みに震えだす。
アルフォンス・エルリックは当時、兄の行動を止めるなど冷静な判断ができた事が、先ほどのエドワード・エルリックの言葉からも‥
被告人の発言は削除されました。
裁判官に軽く会釈すると、検事は合図をする。
葬式後の墓前でも、帰ろうとしない兄を心配するなど母の死後もアルフォンス・エルリックは冷静だったと、村人達の証言があります。わが国では年齢は、減刑に作用しません。冷静に、人体錬成を行ったアルフォンス・エルリックに死刑を!
「待てっ、何でそうなる!?」
被告は発言を控えなさい。
警備官に押さえられても、エドは手や足を振り回し、叫んだ。
ちくしょっ、放せっ。」
被告に退廷を命じます!
「アルっ」
アルフォンスひとり残したまま、エドは扉の外へと引っ張り出された。
扉が閉じられる寸前
アルフォンス・エルリックに死刑を言い渡す。
絶望の響き
アル‥ッ

「何?兄さん、どうしたの?」
夢?‥ゆめ、、か‥
目の前に、自分の足が見え、見回せば天井に白い壁紙、シーツの感触と順に追って、エドはアルの鎧をみとめ、ようやく息を吐いた。汗が額から流れ落ちる。
「珍しく自分で起きたと思えば‥」
アルはエドが落とした新聞を拾った。そこには殺人犯が、心神喪失で無罪を訴えている記事が載っている。
「心身喪失してても、誰かに命じられたとしても、それに抗わなかった罪はあるよね。」
そう言ってから、アルはエドが俯いているのに気付いた。
「兄さん?本当にどうかし‥」
「‥‥ぅ‥っ‥」
「兄さん?‥泣いてるの?」
驚いたアルが慌てて病気かどうかエドの様子を覗おうと屈み込めば、エドはアルに抱き付いた。
「兄さん?」
「‥‥ぃ‥‥」
殺しきれない声で泣くエドを見るのは初めてで、アルはただただ、エドのするがままにさせた。



恐怖

何もできないのは、こわいっすね(笑)。更にアルを失うのはもっと怖いらしいっす 2008/04/13